約 395,755 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2375.html
「声優の重要性」 とある男女2人が都市伝説と戦っていた。が、カップルとは違う。少し似通った2人。そう、彼らは二卵性双生児。名前は 中人本規(なかひと もとのり)と中人釘実(なかひと くぎみ)。彼らが戦っているのは『首なしライダー』。 本規「まずいねー。これは能力発動しないと…」 釘実「確かに…。やるしかないわね」 (そういうことなら、私に任せるネ!!) 釘実の頭に某ジャンプ漫画の似非中国娘の声が響く。彼女の契約した都市伝説は『釘宮病』。 「フハハハハハハハ!!! お前たち人間が俺に勝てると思っているのか!」 少し噛ませ的な台詞を吐く首なしライダー。 釘実(そうね…。ここは戦闘能力の高い貴方に任せるわ。“K型”) 釘実(K)「ほあたアアアアアアアアアアアアアア!!!」 某似非中k(ryっぽい掛け声を出しながら首なしライダーを蹴飛ばす。『釘宮病』の能力のひとつ、釘宮理恵が中の人をしているキャラの能力の使用である。 本規「ぶるあああああああああああああああ!!!」 突然渋い声になる本規。そして飛ばされてきたライダーを攻撃する。彼の契約した都市伝説は『C.V.若本』。能力は若本ボイスになり戦闘力が上がる、と言うものである。 「なめるなああああ!!!」 が、バイクを器用に使い回避する。そして、ピアノ線を出し絞殺しようとする。しかし、 本規「骨まで砕けろぅぅぅぅぅぅ!」 本規が強烈な一撃を叩き込む。これは流石に避けられない。 釘実(今のうちに…行くわよ“L型”!)「バカバカバカバカバカバカバカァーーーー!!!」 首なしライダーの耳にルイズ(ryの声が響き渡る。そして… 「今のは結構やばかtt…くぎゅううううううううううううううううう!!!」 感染した。首なしライダーが感染したのはL型ウィルス。ルイズ(ryの声や画像から感染する。そして、釘宮病の主な症状『定期的に釘宮ボイスを聞かずにはいられない』。 首なしライダーが感染したのを確認すると、釘実は黙った。これ以上釘宮ボイスが聞けなくなるように。最初のうちはまだ平気だったが、時間が経つにつれ禁断症状が出るようになる。 「う…く、くぎゅうううう…あの、声を…」 禁断症状で身動きが取れなくなった首なしライダー。動けなくなったのを確認し、中人兄妹はその場をあとにするのだった… つづく
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4883.html
黒服Y 21 スコープに空を舞うサンタを捉える 引き金にかける指にそっと力を入れる スナイパーライフルから銃弾が放たれるが 同僚「やはり当たりませんね」 命中率は芳しくない もともと狙撃は得意でもないし スナイパーライフルを空に向けて撃ったってなかなか当たらないだろう Y「うりゃ」 隣を見るとYが変な掛け声とともに発砲したとこだった 銃口の先をたどって見るとどうやら当たったようだ そして見たことを後悔した 同僚「…あの筋肉の塊は撃ち墜としてもいいんですか? 一応組織の戦力ですが……」 Yがこちらを振り向いて答える Y「逆に聞こう。天使の舞う空、えせサンタが飛ぶ空、アレが犇めく空、1番見たくないのは?」 同僚「……すいません、駆除の続きをどうぞ……」 視線の先では「兄貴」と呼ばれるものが墜ちていく しかも、尻を押さえながら 考えちゃ駄目! 何故あんな格好で落ちて行くのかなんて考えないで! 止まって私の想像力! 思考を止めるために片付けに専念しましょう、そうしましょう 撃っても当たらないのだから撃つだけ無駄ですしね Yなら都市伝説の能力を使って当てることが出来…… 確か以前Yから聞いた都市伝説の能力はオートポインター(カッコ悪いから止めろとは言っておいた)だった 照準がやたら正確になるだけだよ、と彼自身も言っていた そして彼が今構えているのは二連式の猟銃で、装填している弾丸は一粒弾のはず 狙いが正確なだけであんなに遠くの筋肉塊のアレを撃つなんて芸当が出来るのか そもそも射程圏外ではないのか Yの能力が、都市伝説の能力が、明らかに強くなっている? 普段の態度も仕事も相変わらずで、特に変わったことはなかったけれども Y「さ、もう行こうか、同僚。後はあの可愛い天使達が何とかするだろうし」 考えている途中にYの声が割り込んだ 何故可愛いを強調するのだ 同僚「えぇ、そうですね」 何かあったのだろうか それを私には話してはくれないのか それとも話せないような理由があるのか 何かあったという確証があるわけじゃなく、ただの杞憂かもしれない 問いただしても曖昧な事ばかり言って、否定も肯定もせず、あなたはごまかすのでしょうが Y「やっぱり荷物要らなかったでしょ?」 同僚「そうでしたね」 自分達のいた痕跡などを消してYの後を追いかける 前を行くその背中はいつもどおり、少し頼りない感じがした 前ページ次ページ連載 - 黒服Y
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1845.html
【上田明也の探偵倶楽部】 ベッドで思い切り寝込んでいる男性。 恐らく高熱が出ているのだろう、氷枕をしている。 まあ俺のことである、今俺は風邪を引いているのだ。 「こんにちわ皆さん、最近自分のここの所の生活がアニメ化できそうでわくわくしている上田明也です。 でも主人公と言うよりラスボスな気もして悶々しています。 探偵兼殺人鬼という厨二病全開過ぎて死にたくなる二足のわらじを履いているし行けると思うんですけどね。 まあ探偵の仕事、なんていっても依頼が来るのなんて週に一、二回ほどです。 しかも、都市伝説で仕事を終わらせてしまうのでお金も手間もかからないと。 殺人鬼の仕事なんてさらなりって奴です。 仕事ですらない。 何を言いたいかって言うとすごく暇なんですよ、ええ。 そんな暇なときはどうしているのかって? テレビかネットでも見て時間を潰すに限りますよ。」 誰かに語りかけるように独り言を呟く。 これを行わないと自分の日常が始まらない気がするのだ。 「マスター、生きてますか?」 いきなりの寝室のドアを開けて飛び込んでくる幼女、俺の契約している都市伝説「ハーメルンの笛吹き」である。 彼女の手の上には緑色のおかゆがこんもりのっかったお椀があった。 「うわ、やめろお前がおかゆなんて作るんじゃ……。」 「つべこべ言わずに食えよおらぁ!」 どうやら俺の昼食らしい。 「うに゛ゃああああああああ!?」 病人という存在の弱さとおかゆに有らざる苦みを口中で噛みしめながら俺はそのまま意識を絶った。 ああ、幾ら都市伝説を使いこなしても駄目な物は駄目なんだなぁ……。 【上田明也の探偵倶楽部5~真夜中の赤い砂嵐~】 あの悪夢のようなランチタイムから一体何時間経ったのだろう? 俺が目を覚ますとまず最初に時計を確認した。 真夜中の十二時。 なんということだ、12時間も眠ってしまっていたらしい。 酷く喉が渇いた。 腹も減っている。 体中が痛い。 頭はまるで捻子を突っ込まれたようだ。 思えば、あの謎の黒服達に追いかけられている夢を見てからずっとそうだ。 只の風邪ではないのだろうか? 「メルー、メルゥ?」 掠れた声で我が愛しの都市伝説を呼ぶ。 「うへへ、……これ以上食えません。」 隣で熟睡していた。 幼女の都市伝説が隣で寝ている。 どんな悪戯をしても問題無いだろう。 成る程、ロリコンたるこの俺にとっては風邪さえ引いていなければ中々魅力的な状況だっただろう。 今すぐ押し倒してこの天使のような頬や この世の美をすべてそこに集約した尻などを好きなだけ愛でてから 本丸に突撃するのも中々どうして魅力的だったろう。 「残念ながら俺も食えません、と。」 意味が違うわ、と一人ボケ突っ込みをしながら俺は冷蔵庫まで比喩じゃなく這っていった。 冷蔵庫を漁ると すっかりカラカラになったトマト ポカリスエット――――――恐らくコレを飲むべきなのだろう 安物の粉チーズ ケチャップ マヨネーズ ソーセージ 鯵の干物 が入っていた。 「ああ………。」 十二時間を無駄に過ごしてしまった後悔を噛みしめながらポカリスエットを胃袋にそそぎ込む。 カラカラに渇いた喉やもう何も入っていない胃袋が急な来訪者に驚いて活動を始めた。 それにしても腹が減る。 スパゲティをゆでることにした。 台所の隅に転がっていたタマネギを適当にバラバラに切り刻む。 カウンターに捨て置かれていたニンニクの欠片なども適当な感じで細かくしておこう。 フライパンにオリーブオイルを引いてゆっくりと暖める。 ジュゥワアアアア! ニンニクと一味唐辛子を入れて炒めると美味しそうな香りが立ち上ってきた。 麺の方も中々上手そうに鍋の中で踊っている。 眠りすぎて腐り落ちそうな頭が作り替えられていく。 鍋の中のゆで汁をお玉一杯、よりちょいと少なめにフライパンに入れる。 油とお湯が混ざって白濁し始めた。 麺の様子を見ると丁度芯が残っている固ゆでの状態だ。 ここで麺をフライパンの中に突っ込む。 白濁した液体と麺は絶妙な具合で絡む。 ここで火を止めてナンプラーと鯵の干物を刻んだ物も混ぜ合わせる。 アンチョビの代わりにはならないだろうが無いよりはマシだ。 皿を出して盛ると中々悪くない出来だった。 箸でにゅるにゅると噛みしめると何とも言えない幸せな気持ちになれる。 「中々良い出来だぞ、上田明也。お前もやれば出来る子じゃないか。」 自分で自分を褒めてから何とも言えない寂しさを噛みしめた。 「……寝るか。」 自分に言い聞かせるように独り言を呟いてから寝室に向かう。 まだ自分の体温が残るベッドに潜り込んで瞳を閉じた。 ちなみに我が探偵事務所はあまり広くないので基本的にメルとは添い寝である。 身体が冷えるので湯たんぽ代わりにメルを引き寄せた。 「だからもう食べられないってヴァ………。」 夢の中でも何か喰っているらしい。 本当におめでたい奴である。 「喰っちまうぞ。」 「うわ、ハンバーグが追いかけてきた!?」 メルが急にうなされ始めた。 ハンバーグに追いかけられる夢って大して恐ろしく思えないぞ。 「………今度こそ寝るか。」 俺はまぶたを閉じて頭の中を空っぽにした。 どれくらい時間が経ったのだろう。 時計を見るとベッドに入ってから30分ほど経過していた。 ―――――――――――眠れない。 仕方ないので隣に寝ている幼女に襲いかかろうかとも思ったが ニンニクまみれの口で襲いかかっても只の嫌がらせだ。 それは自分の美学に反する。 適当にテレビやらネットでもして時間を潰すとしよう。 自分の部屋に入るとテレビをつけて深夜の通信販売番組をながめる。 いかにも吹き替え翻訳っぽい声が面白いのだが結局は同じ番組の繰り返しなのですぐ飽きた。 次はパソコンのスイッチをオンにした。 ヘッドフォンをつける。 何か面白いニュースはないかと探し回ってみる。 「お、俺のニュースじゃないか。」 様々な犯罪についてまとめたサイトの中でハーメルンの笛吹き関係の物を見つけた。 中々噂に尾ひれが付いている物である。 どうやらこの国の人間には俺が警察組織の幹部の子供だと思われているらしい。 どこぞの漫画でもあるまいに警察幹部の子供が悪い奴ばかりみたいな物の見方はやめて欲しい物だ。 しばらくニュースサイトを見て回っていると画面上にいつの間にか知らないウインドウが出てきていた。 タブブラウザを使っているのでリンクで飛ぶときにウインドウが出る事なんてありえない。 カチッ! 試しにそれをクリックしてみる。 「あ/か Yes or No」 「おおこわいこわい。」 都市伝説の赤い窓ではないか。 この町はネットサーフィンものんびりできないらしい。 イエスもノーも押さないで放置しておく。 都市伝説などという物は関わらないに越したことはないのだ。 どうせ放っておけばそのうち消えるだろう。 「スーパーハッカーだかスーパーハカーだかと仲良くなっておけばこういうのも簡単に解決してくれるのか?」 あくまで自分の能力は最低で最高なこのアナログ世界におけるものでしかない。 ひとたび電波だの電子だのネットだの言われてしまうとどうしようもないのだ。 やれやれだ。 自分の無力さを噛みしめながら椅子に背中を預けて目を閉じる。 おっ、良い感じで眠たくなってきた。 キーーーーン なんだ、この妙な音は? どうやら後ろから聞こえているようだ。 くるりと後ろを振り返ってみるとテレビが砂嵐になっていた。 そうだ、さっきからつけっぱなしにしていたのだ。 テレビを消そうとテレビに近づくと画面の奥から何か妙な物が見えてくる。 「今日の死亡予定者 上田明也 左門恭二 下田憂晴 右衞門絹 本日の死亡予定者は以上です。」 「なんですと?」 迷うことなく村正を手にとった。 新品だったがテレビをざっくりと斬りつける。 テレビに刃物が食い込むか否かの瞬間、テレビから真っ黒な手が伸びてくる。 それはテレビを壊されてすぐに消えるかと思った。 どうせあんな手だけでは殺せまい、俺はそう思っていた。 ところがだ。 手は俺を狙うことなく“真っ直ぐに”パソコンへ向かった。 俺は自らの判断の甘さを恥じた。 黒い手が狙って居たのはそれだったのだ。 カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ 「――――――しまっ!」 「赤い部屋は好きですか? ニアYes or No」 パソコンの画面は真っ赤に染まった。 「野生の都市伝説が連携とか聞いたことねえぞおい!?」 ベゴン! ベゴン!ベゴン! ベゴベゴベゴベゴベゴ!! 部屋につぎつぎと赤い手形が付く。 どうやらやってしまったらしい。 「っざけるなよ!」 目の前のパソコンを切り刻んで破壊する。 だが赤い手形は増え続けている。 もうパソコンをどうこうしても駄目らしい。 部屋を出ようとした次の瞬間に扉が閉まった。 どうあってもここに閉じ込める気だ。 「つまりだ。」 そのことから、俺は一つの推論を得た。 ビュン! いきなり鉈のような物が俺めがけて振り下ろされる。 いや、鉈ではない。 鉈のような雰囲気のする何かが、と言うべきだ。 「――――――危ねえ!」 間一髪でそれを躱すと鉈が落ちてきた方向を見る。 「……何も居ない?」 確かに、赤い部屋は被害者を血塗れにして殺すがその方法は指定されていない。 つまり血塗れになるならば何でも良いのだろう。 スパッ そう思っていると腕が裂けて非常に良い勢いで血が流れ始めた。 まずい、対策を打たないと……。 そう思った俺はすぐに窓ガラスを壊して部屋を出ようとした。 「赤い部屋と言っても所詮は部屋。 つまりだ。 部屋じゃなくなればあいつは俺に手出しをすることは出来ない。」 バリーン! 華麗に窓ガラスを割って地上2階から飛び出す俺。 下に停めてある誰かのワンボックスカーに飛び降りる………、てあれ? 俺が飛び出した先には先程まで見ていた真夜中の町の風景は無かった。 「赤い部屋は……好きですか?」 広い部屋。 西洋風の広い部屋。 すこし違和感を挙げるとすれば調度も壁も真っ赤な所ぐらいか。 それが異常すぎる事態なのだが。 しかし俺はそれよりも部屋の奥の暗闇から覗く瞳の方が恐ろしい。 暗闇の奥に紅く光る瞳。 あれは一体何なのだ? 「赤い部屋は、本来人々のネットに対する希望や夢を詰め込んだ場所でした。」 悲しげな声が響く。 「何時からだったんでしょう、人々がネットに対して怒りや恨みなどの暗い感情をぶつけ始めたのは。 そうやって私は赤い部屋になったんです。 ここにはそういうネットを通じて人々がはき出したくらぁい感情のたまり場。 だから真っ赤に真っ赤に染まってしまった。 あなたもそうやって暗いところを覗き込もうとしたんでしょう? だから死ぬの。 間違いなく死ぬ。 深淵を覗く物はまた深淵に覗かれている。 それを忘れて貴方は人々が無限に繋がりあうこの電脳世界の暗い場所を見てしまった。 人々の悪意によって貴方は死ぬ。 私のせいじゃない、私にそれは止められない。 ――――――――――――死んで。」 ザクリ 肉が裂ける音がして自分の身体から血が流れ出る。 今度は足か、逃げることも出来ない。 どうやら俺は異世界に連れて行かれてしまったらしい。 異世界にジャンプできる都市伝説なら助けに来てくれるのだろうが……そんな都市伝説俺は契約していない。 無力な物だ。 こうやって対策を考えている内にどんどん血は流れ出していく。 まずい、これは死ねる……! 死ねる、が、まあ良い。 死ぬなら徹底的にあがいてからの方が良い。 すると案外幸運は転がってくる物だ。 「赤い部屋って、どんな都市伝説か知っている?」 「知ってるに決まっているじゃねえか。 被害者は血塗れで死ぬんだろ?」 「正解。だから貴方は即死しない。ゆっくりゆっくり血を流して死ぬ。 人間は本当に脆い。しかしそんな人間の思念が……、私を変えた。 私はもっと良い物として生まれたかったのに……。」 「良い物になることが喜びなのかい?」 「――――――あたりまえじゃない!」 「良い存在になるのが君の喜びなのか。」 「そうだよ。」 俺はわざとらしくため息をついて遠くにいる赤い部屋の主を挑発した。 「――――――――――――くだらねえ。」 こうなれば後は勢いだ。見せてやる、上から目線性悪説。 「全ての人々から喜ばれ愛される善なる存在?良い人?明るいインターネットの未来? バーカ、俺はそんな下らない物認めないぞ信じないぞ。 良い存在?善良なる存在?誰が決めた?誰が決める? それを決められるのは誰なんだ?そうだよ、お前だって解っているだろう? ………そうだ、それは決められない。 お前の価値を決定するのはネットに関わる人々全てなんだよ。 万人共通の幸福や万人共通の正義なぞ有るわけがない。 人は誰しもが不完全で不公平な自分だけの秤を数千年前――――お前が生まれるずっと前からだ、 プラップラプラップラ振り回してきているんだ! お前の在り方を勝手に歪められた? 冗談は休み休み言えという物だ。 世界に存在する全ての物は互いに影響を与えあいながら生きているんだぞ? そんな中で純粋培養された揺るぎない存在などあり得るはずがない。 お前の最初の願いですら恐らく誰かによって設定された物であってチッポケなお前自身の願いなど……」 どんな台詞も締めが肝心。 「――――――――――――――――――端から無かった。」 キリッ いかにも俺は格好良い台詞を言いましたよって顔をするのが肝要。 「……………うぅ、でも私は!」 それでも何か言おうとする赤い部屋の主。 しかし言葉は続かない。 「なんだ!なんだっていうんだ!答えられるか? いいや、お前は答えられないね! お前は自分という存在について自分で考えたことがない。 何になりたいかは考えても己が何であるかは考えてもみていなかった! そんなお前が答えられるわけゴォッッフウウウウウウウ!!!」 俺は勢いよく吐血した。 辺りがドンドン真っ赤に染まっていく。 DANDAN身体冷えていく! ……駄目だ、死ぬわこれ。 「…………大丈夫?」 赤い部屋の主がこちらに近づいてくる。 あ、意外と美人だ。 ロリコンじゃなければ……、いや、俺ロリコンだったっけ? うん、あれは合法ロリだ。 そういうことにしておこう。 「大丈夫なわけ無いだろうが!あと少しで死ぬわ! お前のせいだ!どうしてくれる! そうやってお前は何人もの人間を殺してきたわけだ。 俺もその中の一人になるってか?そうだろうな、俺の命は只今消失しそうだからな!」 「私のせいじゃない!そういう風に貴方達がしたんでしょう? 私は………。私は人を殺したくなんて無いし赤い部屋をもっと楽しいところにしたかった!」 「貴方達って誰だよ!人間か?下らないね、それこそ下らない。 人間程度に左右されてんじゃねえぞ!」 怒鳴りつける。 こちらが普通の人間じゃないと解っているらしいしついでに脅してみよう。 ちなみに彼女が俺に左右されているのに人間に左右されるなと説教されているのはかなり理不尽だ。 「ひぅうッ!」 ビクッとなった。 割と可愛い声しているじゃないか。 「まったく、俺を殺す割には大したことのない奴じゃないか。 楽しいところにしたいなら楽しいところにすればいいじゃねえか! 他人なんて関係無い!もっと!もっと自分で楽しいこと探してみろよ! 他人から与えられる物だけを娯楽として享受するような人格に、知性に、本物の娯楽なんて味わえない。 結局大事なのは自分だろうが! それともあれか?人間に依存する形でしか存在できない都市伝説だから人間の思うとおりにしか動けないってか? それなら誰か良く解らない噂じゃなくて俺に依存してみる気は無いか? きっと楽しい物が見られるぜ?」 立ち上がって赤い部屋の主を抱き寄せる。 赤い瞳、青みがかった髪、白い絹のワンピース。 なんだなんだとても可愛いじゃないか。 まあ合法ロリの範囲だ。 「もう一度言おうか、俺に頼ってみろよ。」 耳元でささやく。 細い首筋と滑らかな肌が触れていて心地よい。 「う、う、うるさぁい!」 もう半狂乱気味にわめく赤い部屋の主。 人間と話したことがあまりなかったのだろう。 しかし俺も時間がない。血がない。仕方がないし仕方もない。 彼女に対して仕上げを行おう。 「でもな、聞いてくれ。ここからが………、大切なんだ。」 「どうせなんか説教するんでしょう?ていうか何よ!なんでそんだけ血を流しているのに死なないのよ! おっかしいんじゃないの?死ぬんじゃないの?馬鹿よ!アンタ馬鹿!知らない、私は何も知らないんだあ!」 「そうだ、その通りだ。俺は馬鹿だよ。お前の言うとおりだ。」 「………え?」 「俺、子供の時はそこそこ良いところのお坊ちゃんとして育って居てさ。 家族も優しかったし友達も沢山いたしそこそこ幸せに過ごしていたんだ。 でも、都市伝説と契約する為にそれら全部捨てちゃった。 将来は弁護士にでもなってから親父の会社継いで人の数倍幸せな生活しようと思っていたのにだ。 なんでだと思う?」 「………あんたが馬鹿だからじゃない。」 「そう、そうなんだよ。でも………。」 おぅふ、マジで意識がなくなってきた。 ここからが勝負だ。 「でも?……でもどうしたのよ? 死んだの……?ねぇ、何か話してよ………。」 よし、良い感じで心配している。 このまま少し死んだふりしていれば良い。 おお、良い感じに傷がふさがり始めた。 出血死のタイミングはこいつが握っているんだからこいつに殺したくないって思わせれば上出来だ。 「……ああ、気を失っていたのか? どこまで話したっけ? そうだ、俺が馬鹿だという話だ。 その通り、お前の言うとおりに俺は筋金入りの馬鹿なんだ。 でもな、それでも欲しかった物がある。 たとえ馬鹿と言われても、どんなにねじ曲がった手段でも、目指す物がある。 愚かで結構、邪悪で結構、弱者で結構、なんであっても結構だ。 でも、譲れない物があった。お前にはあるか?俺にはそれがあるんだ。」 「な、何よ?」 「そうだな、愛………かな?」 おおくさいくさい。 うわ、赤い部屋の主も固まってる。 引いてるよこれドン引きされてるよ。 高校の頃ロリコンがばれかけた時と同じくらいやばいってばこれ。 しかしここで幼女とか言ったら呆れられる、それは冗談じゃなく俺の死に繋がる。 まったく困った話だよ。 「………愛なの?」 聞き返してきた。 どうやらまだなんとか俺は生きていて良いらしい。 「ああ、愛だね。都市伝説の力を俺が求めたのも全部それだよ。 俺はね、他人の心の痛みがわからないんだよ。 どれだけ必死になっても全く解らない。 言葉としては解るんだよ? でも実感としては解らない。 そんな俺には心の底から安穏とできる居場所なんて無かった! 他人の痛みが解らない人間だから他人に理解して貰えないなんてルールはないはずだ! 狂ってるよな、狂ってる。でも逆に考えればそんな自分の心の痛みを解ってくれる恋人がいればそれは何にも優先する。 だから、お前も俺と一緒に来ないか?」 「………今、恋人居ないの?」 「居ない。なってくれるか? なってくれるとすごく嬉しい。」 おお、外道外道。 返事はない。 代わりに契約書のようなものが目の前に落ちてきた。 すでに二つの都市伝説と契約しているけれど……、何故だろう。 俺の器はまだ広がる気がするんだよ。 サインに自らの名前を書く。 全身の血管が膨張していくような感覚だ。 脳髄が揺さぶられて内蔵一つ一つがひっくり返っているんじゃないか? ああ、吐きそうだ。酷い嘔吐感に俺は襲われて居るのか。 しかし、それでも、未だ俺が正気を失うことはない。 正気なんてとっくに失っていたか? それにしてもまだ自分が化け物じゃないって解る、良いことだ。 それにしてもどこまで都市伝説を突っ込めば俺の身体は破裂するんだ? 「ところでお前をなんて呼べば良い?」 名前というのは大事だ。 「好きにすれば?」 ぶっきらぼうに返事をされた。 ははは、愛い奴め。 他人に名前を任せるのは自らの在り方を決定されるような物だというのに。 「そうか、じゃあお前は今日から茜さんだ。とりあえずこの部屋から出してくれ。 愛しているぜ。」 やった俺、よく頑張った。 「ん、解った……。感謝してよね。」 かくしてこの俺上田明也は都市伝説の助け無しで赤い部屋からの生還に成功したのであった。 厳密には赤い部屋自身の能力で帰って来たのだが細かい所は良いんだよ。 【上田明也の探偵倶楽部5~真夜中の赤い砂嵐~ fin】 朝、目が覚めると俺は思いきり自室の椅子で眠っていた。 ネットゲームでいうと寝落ちだ。 面倒な事件もひとしきり区切りがついたのでとりあえず自分にナレーションをすることにした。 「……と、いうお話でした。 メルにはばれていません。 ばれたら修羅場です。 つーか俺の身体ってなんなんでしょうね? 知らない間に勝手に都市伝説に対する容量が増えているとかね。 俺は身体があると言うよりは生体都市伝説運用装置とでも言った方が良い状態みたいだしさ。 ほんとうにやっていられませんよ。 次回の上田明也の探偵倶楽部は豪華三本立て! オムニバス形式のお話を予定しております。 それじゃ来週もまた見て下さいね? じゃんけんポーン! グーの貴方はチョーラッキー! うふふふふふー……、ガクリ。」 カタ ヴィーン…… 急に目の前のパソコンが動き出す。 「あ/か」 まただ。 どうやらまだ俺を眠らせてくれないらしい。 「あなたは私のことが好きですか?」 やれやれ、といった感じで肩をすくめると俺はとりあえずイエスを押した。 【上田明也の探偵倶楽部 続く】
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2592.html
やって来た他の黒服たちに、死体の処理などを任せ2人はその街を立ち去っていた。 能力によって読み取った情報を本部に伝えた所、此方に来て詳しく話せと言われたからだ。 「や~。ビックリしましたねぇ」 「そうだな。《七人みさき》何て大物が居たなんてな」 「いえ。それもですけど、ビルの方ですよぉ」 「そっちか……」 話し合う《残留思念》の黒服ことS-No.560と、担当契約者である《女の勘》の女性。 初めは大量の死体に注意を奪われていたのだが、暫らくしてそれ以外にも気を向けるようになった。 ふと、少し離れた建物に目をやると眼前のソレと同じ位とんでもない物が在った。 ビルのフロア1つが、そっくりそのまま消し飛んでいたのだ、まるでだるま落としの様に。 「あれも、《七人みさき》の仕業なんですよね。大丈夫ですかねぇ」 「何がだっととと」 不意にSが声を上げる、これは彼らの現在の状態が原因に有る。 移動のために、女性の運転するバイクに2人乗りをしており、先程はカーブで少しばかりバランスが崩れたのだ。 妙齢の女性である《女の勘》の契約者に、後ろから抱きついている黒服の姿は、一部の人間には羨望の対象になるかもしれない。 「えと、ですね。今の現状って、他にも厄介な事があるでしょう。その上に、《七人みさき》じゃないですかぁ」 「大丈夫だろう。他の件は兎に角、《七人みさき》に関しては対策を思い付いたからな」 Sのその言葉に女性は驚いた。大勢の人間を一度に相手取り、ビルの階一つを消し飛ばした《七人みさき》。 詳しくは分らないが、その戦力がかなり高い事は簡単に想像することが出来た。 それをどうやって、倒すつもりなのだろうか? そんな女性の疑問に気付いたSが、補足するように声をだす。 「あぁ。対策っつても、本当に効果が有るか分らんけどな。 ヒントを出すとしたら《七人みさき》に取り込まれるのは《七人みさき》に"殺された人間"だけって事だな」 「それってどう言う……」 ダーン、ダーン、ダーン、ダン、ダン………………… 突然、ボールの弾む音が、女性の言葉を遮るように聞こえて来た。 それも、全く音が小さくなる気配が無い。バイクはそれなりのスピードで走っているのにだ。 音のする方に、Sが眼をやるとそこには、 「《ドリブルババア》かよ。厄介なのに会っちまったか?」 「っちょ、私達2人とも戦闘は専門じゃ無いですよ!? しかもバイクに乗ってる最中ですしぃ」 バスケットボールをドリブルしながら自分達と同じ速さで走っている老婆がいた。 老婆はバイクの真横にピッタリと張り付きながら、2人に向かってニタリと笑う。 《ジェットババア》や《100キロババア》等の亜種として知られるのが、この都市伝説だ。 だが、その2つと《ドリブルババア》には、大きな違いが有る。それは、ボールをぶつけて来ると言う事だ。 ボールを受け取ればハンドルから手が離れ、無視すれば体に当てられバランスを崩す。どう対処しても質の悪い都市伝説である。 「大丈夫だ。1人ならキツイかも知れんが、幸い今は2人いる。お前はそのまま運転を続けてろ。俺が処理する」 「そ、そうですか。分りましたぁ」 女性は運転に集中するために、《ドリブルババア》から目を離して前方を見直す。 一方Sは、女性の体から片手を離しスーツの内側から何かを取り出した。それは、片手に収まるサイズらしく見る事は出来ない。 「さて、こいつで如何にか出来るか?」 確認するようSは、手の中のソレをいじる。そして、睨みつけるように老婆を見やった。 「ハーイ! 若いの、元気してるかい!!」 「…………」 老婆とは思えないテンションで、《ドリブルババア》が喋りかけて来た。 まぁ、バスケットボールをドリブルしながらバイクと併走する様な、ハッスル婆ちゃんだ可笑しくは無いかも知れない。 「どうしたんだい?! 黙っちゃって、返事ぐらいしなよ!!」 「……いや。テンションの高い、婆さんだと思ってな」 行き成りのハイテンションに驚き、黙ってしまったSが、《ドリブルババア》の2度目の言葉に、呆れたように答える。 運転をしている女性も、同じように呆れて居るのが感じられた。 「さて。見逃してくれ、と言いたい所だが、どうせ無駄なんだろう?」 「そーの通りさ。んじゃ、喰らいなぁ!!」 そう言うと同時に、老婆はボールを投げつけようと腕を振りかぶった。 「断るに決まってんだろう。思念開放」 握っていた手を開き、Sはそう告げた。 開けられた手からは、金属製の何かが数個バラバラと零れ落ちる。 それは……使用済みの銃弾だった。 「そんな物で、何をする気だい?」 突然のSの行動にタイミングを逃され、ボールを投げる姿勢のまま止まっていた老婆が怪訝な表情を浮かべる。 銃弾は《ドリブルババア》に当たる事も無く、後方へと流れて行く。意味のある行動とは思えなかった。 今度こそ、ボールをぶつけ様とした。が、それは叶わなかった。 何故ならば、遥か後方へと流れ去って行った筈の弾丸が、《ドリブルババア》を背後から撃ち抜いたのだから。 背後からの不意打ちにより、バランスを崩した《ドリブルババア》はボールを取りこぼしてしまった。 「何、だい?! どういう事だい、これは」 驚愕と困惑の混じった声を出す、《ドリブルババア》。 無理も無いだろう。何の変哲も無い、捨てる様にばら撒かれた銃弾が自分に向かって襲い掛かる等普通では考えられない。 だが、その普通では無い事を起こすのが都市伝説の力……なのだ。 ここで、《残留思念》と言う都市伝説に付いての、簡単な話をしよう。 この能力は、言うなれば思念(記録)を読み取る力の事だ。そこには、生物・無生物の関係は無い。 さらに無生物の場合は、込められた思念を開放する事によって、それを実現させる事が出来るのである。 そして、今回Sが使ったのは、かつて都市伝説を攻撃するために使用された銃弾であり。 そこには、都市伝説を攻撃すると言う思念がこびり付いていたのだ。 故に、その思念を開放された銃弾は《ドリブルババア》を狙い攻撃したと言う事だ。 「よし! 今のうちだ、全速力で引き離せ!」 倒すまでには行かなかったが、銃弾に怯み老婆が動きを止めた事を確認したSは、女性にしがみ付き直しそう言った。 それに返事をする事無く、女性はバイクのスピードを限界まで上げる。 これで、バイクと《ドリブルババア》の距離は大きく離されていった。 「はぁ、失敗かい。ま、良いさ次の獲物を狙うとするかね。おぉ、痛い」 遠ざかって行くバイクを見送りながら、《ドリブルババア》は諦める様にそう言い。 銃撃による痛みに顔を顰めながら姿を消していった。 《ドリブルババア》を撃退する事は出来たが、別の都市伝説に襲われる可能性が無いとも言い切れない。 2人の乗ったバイクは、急ぐように目的地である組織へと走っている。 続く
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5125.html
10 そして 色々あったがもう金曜だ、早いな 何だかここ最近は都市伝説絡みの出来事が多い この町に越してきた四月から動いてはいたものの進展は無かった 四月に人面犬のおっさんとその仲間に出会えたのは良かったが、その後はさっぱりだ 空七の一件も大家さんの一件も「怪奇同盟」の盟主さんに挨拶する件も進展は殆ど無かった それが九月に入って一気に動き出しそうな気がする 高奈先輩と友達になったことがそれを予感させて仕方がない 不思議な話だ、もしかしたら四月からの行動が今につながっている? まさかな そして一気にといえば美人さんとの出会いも増えた、気がする 具体的にはやっぱり高奈先輩との出会いだったり「ヒーローズカフェ」の店員さんだったりする 商業の女子に心が砂漠になったときや合コンの数合わせで参加したときの顛末に比べたら凄い進展だ もしや本当に“ツキ”ってヤツが俺の方向に向き始めたのだろうか まさかな ただし、だ 今になって一番不安なのはこの後のことだ 良いことが起これば漏れなく悪いことも起こる、という格言がある 実際、最初に高奈先輩と出会えた後日、俺はなんか変なの(組織の変なの)に絡まれてしまった いやあえらい目にあったぜ、あの夜は 俺の予感が正しければ、そろそろ悪いことが起きるのではないか あのなんか変なのに追い回された一件は決して小さい出来事ではないぞ 用心には用心を重ねた方がいいに決まっている、現に今もうっすらと赤マントのニオイがするからな そう、赤マントだ 四月頃から学校町内で都市伝説を見ることはあった 何せここは学校町だ、都市伝説を目撃する確率は決して低くない だが最近は幾らなんでも増え過ぎじゃないか、他の人が目撃しててもおかしくない 気になるのは今の時点でニオイを感じるという一点だ 俺の知る限り、徘徊性の都市伝説は日中と人っ気のある場所は避ける 実際この学校町にしても、都市伝説を見る時間帯は圧倒的に夕方と夜が多い 夕方はともかく、日の出ている内に目撃したことはほとんど無かった じゃあこの赤マント臭は何なんだろうね 立ち止まる 今、俺は東区にいる あのなんか変なのの一件以来、夜間の散歩はしていない してはいないんだが、東区の散策は下校のついでに続けていた そして今は夕方だ、つまりもう都市伝説が出没してもおかしくない時間帯だ まさか、近くに赤マントがいるのか? 俺は感覚を開いてニオイをよく確認しようとした 「助けてくださぁーい!」 悲鳴だ 今のは確かに女の子の悲鳴だ 距離は近いぞ、丁度この近くから聞こえたはずだ 直前まで考えていた内容の所為でまさか赤マントが出たのかと疑問がよぎる いや、そんなことは現場を確認すれば一発で答えが出る 俺の足は既に動いていた 声の聞こえた場所へ走る 「助けてぇぇー!!」 曲がり角に入ったとき、俺は悲鳴の主を見つけた 恐らく転んだのだろう、道路に倒れて手で顔を覆っていた おさげロールというべきかドリルな髪が目を引く制服姿の女の子だ そして女の子の前にいるのは――赤マントじゃねえか!! 奴らは二体いるぞ 気色悪いことに手をわきわきさせながら、徐々に女の子に対して距離を詰めていた 迷う理由など全く無い、俺は速歩でこちらに近い方の赤マントに近づいた 奴らがこちらに気づいた気配は無いが当たり前だ、俺は気合で気配を閉じている 夕方とはいえまだお天道様は沈んでないんだ、悪いことができると思うなよこの野郎 「 跪け 」 肩を手で叩くと同時、赤マントの体は膝から地に崩れる 余所見している猶予など無い、崩れた赤マントの脇をすり抜けてもう一体へ間合いを詰める 後ろから胸ぐらを掴むように手を回すと同時に腰の辺りを装束ごと引っ掴んだ 慌てた様に赤マントは身を捩るが逃がす積りなど無い、引き寄せながら足を払い、そのまま後方へ投げ飛ばした 赤マントの悲鳴を聞いたがそんなものは無視だ 女の子に近寄り、肩に手を掛けて膝裏に手を滑り込ませた 「ひっ、ひィィィっ!?」 「ちょっ、ごめんね! 逃げるよ!!」 女の子をお姫様だっこで抱き上げるとそのまま前方へ疾走 抱き寄せて分かったがこの子は契約者じゃない、普通の一般人だった ニオイだ、契約者特有のニオイが無い、あと体重軽いな!? 一瞬余計なことが頭をよぎったが、振り払う 今は赤マントから逃げるぞ 先程の場所よりも開けた十字路に出た 後ろはどうだ、奴らの気配は――無い、ニオイも無い 今回も上手く逃げられたんだろう、警戒するに越したことは無いがひとまず安心だ 「あのー……、君、大丈夫? 立てる?」 「……こ、怖かったですの」 女の子は全身がふるふる震えて涙目になってる 血の気が引いているのを見るに余程怖かったんだろう 「立てるかな、よっ」 「きゃひっ、あっ、ご、ごめんなさい! まだ、無理ですのー……」 足からゆっくり下ろしたが膝が凄く震えている、確かに無理だ 「ちょっと待ってね、おぶるから。よっ」 「あう、ご、ごめんなさい!」 素早く立ち位置を変えて女の子をおぶった まさか施設時代の救護実習で学んだ技術がここで活きるとはな 「あの、ありがとうございます。あの変な人達に追い掛けられて、怖くて、転んで」 「あ、あー……、そうだったの」 彼女は凄い大声で助けを呼んでいたが、俺以外に人を見なかったな そもそも都市伝説が徘徊しているときって人の気配がかなり薄くなることが多い 東区は閑静とはいえ一応は住宅街だから悲鳴を聞いて誰かが来てもおかしくないんだが 「あれだよ、ほら! 最近はなんか変質者が多いみたいだから、大通りを通った方がいいよ!」 「うぅぅー、気をつけますの……。でもアルバイトに遅れるからよく近道を通ってましたの……」 「……アルバイト?」 「はい、五時からですの……」 五時かー、おぶってるから時計を確認できないけど勘が正しければもうすぐ五時じゃないかな? 「……バイト先まで送ろうか?」 「えっ? あっ、あのっ、すいません! よろしくお願いしますのっ!」 OK、女の子の頼みは引き受けるのが、ほら、男としてなんかアレだ 話を聞けば、バイト先というのが東区のかなり奥の方にある喫茶店らしい 「商業高校の方ですの?」 「うん、早渡脩寿って言います、よろしくね」 「私はコトリーと申しますの! 高校一年生ですの!」 「マジかっ!? てっきり中学生だと思ったけど!! てか俺とタメだよ!? 敬語使わなくてもいいよ!?」 「まあそうでしたの!? でも私は普段からこういう話し方ですわ!」 女の子の制服は東区高校のでも東区中学のでも無いので別の区の中学かと思ったぜ 話を聞けば辺湖市新町の高校に通ってるらしい、背丈からして中学生だと判断したが甘かったな コトリーちゃんは先程よりも大分落ち着いたらしい、素の彼女はかなり朗らかな女の子のようだ 「ちょっと急ぐね」 「あう、お願いしますの!」 いくら変質者(赤マント)に襲われたとはいえバイトに遅刻はまずいよね コトリーちゃんを抱え直すと足を速め、東区の奥へと急いだ □■□ 前ページ / 表紙へ / 次ページ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2901.html
【ある秋の話】 ゾクッ・・・ (裂邪 おいお前ら! 今のわかったか!? (シェイド 何ナノダ、コノ禍々シイ「エナジー」ハ・・・ (バク ・・・「夢の国」だバク。 (ウィル いよいよ動き出したみたいでい! (ミナワ 大変ですよご主人様! 「夢の国」といえば、ものすごく強い都市伝説の一つです! (ウィル 強ぇなんてモンじゃありやせん! ありゃ「地獄」そのものだぜい! (バク 『パレード』に巻き込まれたら最後、もうこの世には戻ってこられないバク! (シェイド ドウスル裂邪? 戦イニ出向クカ? (裂邪 慌てるな! (裂邪 他の契約者が既に動いている。 厄介事には巻き込まれたくない。 (四天王 他力本願!? こんなことが数回あったそうな。 【マッドガッサーの話】 (裂邪 なんか、男が女になったり、女が男になったりする事件が相次いでるってきいたんだが。 (ウィル そいつぁ「マッドガッサー」の仕業でい。 (ミナワ あ、私もそれ聞いた事あります。 会ったことはありませんけど。 (シェイド 何者カガソウイウ効果ノアル「ガス」ヲ撒キ散ラスラシイナ。 (裂邪 この町は本当に都市伝説だらけなんだな; (バク あと、女になるガスを女があびたら、ヤらしい気持ちになるそうだバク。 (裂邪 へぇ、ヤらしいねぇ・・・ (裂邪 ミナワ、ちょっと出かけよう。 (ミナワ へ? どこへですか? (シェイド 待テ貴様、犯罪ダゾ? 【団体さんの話】 (ミナワ えっ!? ご主人様、今何と仰いました!? (シェイド 「組織」モ「首塚」モ知ラントハメデタイ奴ダナ・・・ (裂邪 え? なになに? 俺そんな悪いことしたの? (ウィル 「組織」ってのは、都市伝説専門の警察みたいな感じだと思って下せえ。 (バク 「首塚」は平将門が率いている「組織」の敵対勢力のようなものだと聞いたバク。 (ミナワ この町では他にも「怪奇同盟」とか、かなり多くの団体があるんです。 (裂邪 へ~、結構あるんだな。 (裂邪 ・・・もしかして、俺の世界征服の夢って厳しいのか? (四天王 かなり。 【油断ならない話】 (裂邪 「一に褒められ二にふられ、三に惚れられ四に風邪」・・・って知ってるか? (ミナワ えっと・・・確か「くしゃみ」、でしたよね? (裂邪 あれって都市伝説か? (シェイド 原義上ハ、ソウナルダロウナ。 (裂邪 ふ~ん・・・・・・ (四天王 ドキッ! (ミナワ ご主人様、これ以上はホントにお体がもちませんよ!? (ウィル 正気になってくだせぇ旦那ぁ! (バク 少しは自分の事も考えるバク! (シェイド 今度コソ貴様ヲコノ手デ消スゾ!? (裂邪 な、何だよお前ら!? 【お化け屋敷 1】 (担任 ―――というわけで、このクラスの文化祭の出し物は「お化け屋敷」に決定しました。 (一同 イェ~イ! (担任 内容はどうするんだ? (男子A 人魂! (女子A 死神! (男子B 化け物! (担任 いやもっと現実的なものにしろよ; (裂邪 先生、今出た奴全部用意できますが? (男子C さっすが裂邪! (女子B 黄昏クンかっこいー! (担任 じゃあ頼むぞ黄昏。 (裂邪 ―――ということで、お前達に協力してもらうことになった。 (ウィル お安いご用でい! (獏 待てこらクソ主ィ! (シェイド オ前ニトッテ我々ハ何ナノダ!? (ミナワ 皆さん大変そうですね・・・; 【お化け屋敷 2】 ボッ・・・ (男子A うわ! 人魂!? コロシテヤル・・・ (女子A キャー! 死神!? グアォ~! (男子B うお! 象の化け物!? (男子A お前スゲェな! でもどっからあんなの持ってきたんだ? (裂邪 トップシークレットだ。 (獏 (あんのヤロォ・・・) (シェイド (イツカアイツヲコロシテヤル・・・) 残念な事に校長にボツられたそうな ...Fin 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4796.html
ゲーム王国編 第五話 【私亡確認】 初めて至村さんと出会ってから一ヶ月。 戦い方を教えてやると言われ師事していた時から約三週間。 至村さんは今日も公園に来なかった。 「何かあったのかな」 「だろうな」 「アメにも何があったかわからないの?」 「てめえと一緒に行動してる俺にわかるわけねえだろうが」 「匂いとか」 「匂いでわかんならてめえもわかるはずだ、契約者」 この三週間で『人面犬』との関係も若干変わり、『人面犬』にはアメという名前をつけた。 最初は永六輔のような声をしていたからロクスケと呼ぼうとしたんだがめっちゃ怒られた。 じゃあ浅田飴だと言うと呆れたような口調でアメでいいとのこと。だから『人面犬』のフルネームは浅田アメだ。 その代わりというか何というか、アメもこちらを契約者と呼ぶようになった。 信頼の表れと取っていいものかどうか。 「で、今日はどうする気だ?」 「別にいつも通りかな。後一時間くらい待って来ないようなら帰ろう」 「帰りに都市伝説と遭わなきゃいいけどな」 「怖いこと言うなよ……」 ちなみに、あれから都市伝説と三回ほど戦っている。 最初が『口裂け女』で、次が『トイレの花子さん』、昨日が『首無しライダー』だ。 都市伝説相手の戦い、というか喧嘩すらしたことがないもんだから怖くて怖くて仕方がない。 昨日なんておしっこチビるかと思った。……いや、思っただけであって実際に漏らしたりはしてないよホントに。いやいやマジでマジで。思わぬことが起きたらビックリするのは当たり前のことじゃん? いきなり首が無い人見たら驚くに決まってるじゃない。人じゃなかったんだけどさ。あくまで比喩的な表現でチビると言っただけであって、実際は足が震える程度だよ。そうそう、めっちゃ足が震えただけ。決して漏らしたりなんかしてないッスよ。確かに悲鳴を上げて逃げ出そうとした情けない自分を認めるけどさ、漏らすわけなんかないじゃない、嫌だなあ。それでもなんとかかんとか撃退できたんだからそのくらいどってことないよ、うんうん。ほとんどアメが戦ったことも認めるよ、遠くから石投げつける程度しかできなかったしね。それとおしっこ漏らすとは話が違うんじゃないかなあと思うわけよ。戦いの役に立ってないこととおしっこ漏らすことはイコールで結んじゃあダメなんだよ。役立たずが皆、おしっこ漏らすわけじゃないでしょ? そういうことを言いたいわけ。わかる? 「てめえは少し自衛のために戦いに慣れとくべきなんだよ」 「うーん、別に逃げれば死なないからいいんじゃない?」 ◆ □ ◆ □ ◆ 「死んだよ」 「そうか」 西区にある小さな喫茶店――江良井と錨野のふたりは奥の席に座っていた。 利発そうな少年が運んできたコーヒーを一口飲み、一息吐く。 「きみが原因なのは言うまでもないとは思うけど」 「ああ」 「あの日〈組織〉との戦いを終えた僕らがきみらの戦いを止めることが出来たのは本当に偶然だった」 「ああ」 「あの時点ですでに重傷。両手両足はもとより臓器に至っては全滅――この一ヶ月、僕らに出来たのは痛みと苦しみを取り除くだけだった」 「安らかに逝けたのか?」 「多分、きっと」 一月前、〈組織〉との戦闘が終わってすぐに、高城が自らの能力である『アメリカ村』が強制的に解除されたのを知った。 おっとり刀で駆けつけた彼らが見たものは血塗れになって横たわる新居と、顔色ひとつ変えずに立つ江良井。 高城が咄嗟に『アメリカ村』を発動させて〈ゲーム王国〉の面々を異界に匿った。 都市伝説とはいえ、イリアスも左半身をやられている。 〈組織〉の黒服をひとり屠った後の黒服の撤退までは錨野の描いた絵の通りに進んだものの、江良井の復活と参入は予想外であった。 病院へ運ばれた新居の状態は言うまでもない。 「病院に無茶を言ってまだ霊安室にいる。生前からの希望は遺体はその辺に捨てといてくれと言われていたが、法律上は流石にそうはいかない。本人の希望通り、火葬のみで結構。遺骨はぼくらが連れて行く。そこで江良井くん。きみが搬送し、きみが火葬場まで連れて行くんだ。それが新居忠を殺した男の義務だ。――嫌だとは絶対に言わせない」 いつも身に纏う飄々とした空気がない。 悲しみと怒りと別の感情と。 〈ゲーム王国〉の仲間、新居忠の死は錨野にとってどれだけのものなのか。その心中は本人にしかわからず、錨野は語らない。そして江良井も問おうとしない。 「俺は葬儀屋だ。依頼が入れば動く」 「そうか……いや、そうだったね。きみはいつも――いや、今言うことじゃないか」 自分のコーヒー代をテーブルに置き、錨野が立ち上がる。 「遺体の引き取りは今から……そうだね、準備もあるだろうから三時間後で結構。それじゃ、また後で」 それ以上何も言わず、振り返らず錨野は立ち去った。 葬儀屋という仕事に就いてから何度も見た光景。 ひとりになった者の背中――しかし、今の錨野は似て非なるものだ。 彼にはまだ仲間がいる。 対して江良井は―― ◆ □ ◆ □ ◆ 「お、元気してたか、バカ息子。一ヶ月も顔見せないから熊に食われたのかと思ったぞ」 「お蔭さんでな」 「お前のことだからどうせまーたロクでもないことに巻き込まれてるとは思ったけどよ、あんまり俺を巻き込むなよ」 「会社から電話がいったそうだな」 「当たり前だろ。従業員が連絡なしで三日も四日も無断欠席なら普通の会社なら心配するだろ」 「で、お前は何と答えたんだバカ親父」 「お尻ピリピリ病にかかりまして、しばらく入院してるんです。面会謝絶と言われてるのでお見舞いは結構です。いつもいつも愚息がご迷惑をおかけしてすみません、だけど?」 「殴られる覚悟は出来たか?」 「おいおい、父親を殴るなんてとんでもない息子だな。大体何日も無断欠勤するお前が悪い。悲しいなあ、父さんはそんな風に育てた覚えはないぞ」 「育てられた覚えもない」 「――で、若返ったのはそのゴタゴタが原因か?」 「そうだ」 「また面倒臭いことしやがって。お前はナイスミドル向けじゃないな。チョイ悪親父はブームを過ぎたかに見せかけて今まさに盛り上がろうとしてるんだぞ? この俺を中心に」 「……もう喋るな」 疲れたように頭を抱える江良井。 新居から逃げられた翌日に会社に出向いた江良井が上司から聞いたのは奇病に罹ったせいで出勤できなかったとの言葉であった。 犯人は言うまでもなく実の父。 四日ぶりに出社した日から今日まで同僚を含めて妙に温かい眼で見られたのはそのせいだった。 もっとも、都市伝説絡みで無断欠勤をせざるを得ない場合は過去にも何十回もあり、その都度父親の虚言で免れているのだが。明らかな作り話なのに未だに会社ではバレた様子がないのが不思議である。 「んで、今日は何の用だ?」 「ここ最近この町で何かおかしなことはなかったか?」 「別になーんにも。この町にしてはいつも通りさ。どこかしこで暴れる連中がいたり、表沙汰にできない人死にが出たりは日常茶飯事だ。そう言えばここ最近『山崎渉』の落書きは見ないな」 「そうじゃなく……上手く言えないが、この町がこの町じゃないようなことはないか?」 「言いたいことが良くわからねえな。今のお前が巻き込まれていることがそれか?」 「確信は持てないが」 「何かあれば〈組織〉の連中が動くだろうよ」 「動いていないから問題なんだ」 江良井と新居が戦った同日、錨野達は〈組織〉と戦っていた。 早々に撤退して以来、〈組織〉の動きはないと言う。 錨野達に対する警戒を緩めたか。 ――否。〈ゲーム王国〉建国を掲げる連中を見逃すほど〈組織〉は甘くない。 〈ゲーム王国〉と〈組織〉の間で何らかの密約が交わされたか。 ――否。穏健派ならいざ知らず、彼ら過激派は密約など交わしはしない。 共通の敵を江良井に定めたか。 ――否。〈ゲーム王国〉は江良井を敵とすればどうなるか知っているし、〈組織〉も第一級監視対象者である江良井に対して敵との認識はしない。 別の案件を抱えて手一杯の状況か。 ――否。以前姿を現したA-№102のナンバーから察するに彼が所属しているのは、たとえ〈組織〉全体が動いていても独自の行動が許されている異端のグループである。別の案件で手一杯ということはありえない。 〈ゲーム王国〉を泳がせている最中か。 そう考えるのが可能性として一番高い。 「どうでもいいけど俺が巻き込まれるのだけは勘弁してくれよ」 「文句はあいつらに言ってくれ」 「ところでよ、今度ニコ生主やろうと思うんだけどどう思う?」 「知るかアホ」 ◆ □ ◆ □ ◆ 新居の火葬が終わった後も、〈ゲーム王国〉は動きを見せなかった。 火葬に立ち会ったのは錨野ただひとり。 火葬場から立ち上る煙を見上げ、何を思ったのか。 誰も何も言わず、錨野が口を開いたのは葬儀の金額を払い終えてからだった。 「四十九日が終わり次第、ぼく達はきみの敵となる」 「そうか」 「最初からそうすべきだった。ぼく達の――いや、ぼくの覚悟が足りなかった」 錨野は語りだす。 自らの思いを、新居が骨となった今。 「この町における何者にも勝る最善は敵対しないことだと思っていた。この町は怖い。祟り神や笛吹き、寺生まれ、三国時代の猛将、魔法使い、影使いや変身ヒーロー――今では話もあまり聞かないが――最強の主婦もいる。名前を挙げればキリがないが、ぼく達は彼らとは関わらずに水面下で事を進める予定だった。だがそうはいかない。江良井卓――きみがいるからだ。ぼく達……というよりは、ぼくがこの町で何かをする上できみだけは避けて通れない存在なんだ」 「過大評価だ」 「敵にならないのであればそれでよかった。だが、ぼく達のような異分子はこの町で誰かの敵にならなければならない。それがきみなんだよ。そういう風にできているのさ。この町――あえて括弧つきで呼ばせてもらおう――『学校町』の意思によってだ」 「『学校町』の意思とやらに俺が選ばれたとでも言うのか?」 「いや、違う。彼らこそが『学校町』そのものなのさ。皆は違うと言うだろう。だが、この町の害意に対して彼らはどうして戦う? 何かを守るため? 誇りのため? そこに戦いがあるから? 与えられた任務だから? 快楽に浸りたいから? 気に入らないから? どれも違うね。彼らこそが『学校町』だからだよ。彼らが『学校町』だから彼らは戦うのさ」 「……」 「異変に対して素知らぬ態度で何も知らぬ一般人のようにただ過ごしていればいい。次の朝にはいつも通りお日様は東から昇る。きみも知っている通り、この町は国の内外問わず各機関から目をつけられている。放っておけば彼らが終わらせてくれるのにどうして自分達の手で決着をつけるんだい? 『学校町』に住む彼らには戦わないという選択肢があるのにそれを選ばないのはどうしてだい? 一般人は『学校町』に意思はないと言うだろう。本当のところはどうだかなんてぼくにもわからない。だがね、ぼくは思うのさ。『学校町』が彼らを生み出したんじゃないかってね」 「自分を守るためにか?」 「いいや。『学校町』が『学校町』であるためにさ」 町の意思。 何かの比喩でそう言う者はいるだろう。 だが錨野は本気で言っている。 錨野風に表現するならば『学校町』は己の意思を持っていると。 俄かには信じられない話だが、ありえないと江良井が一蹴しないのは江良井もまた感じているからなのか。 信じられぬことが罷り通るこの町なら意思があってもおかしくはないと。 「ハワード・フィリップス・ラブクラフトの名前を聞いたことは?」 「クトゥルー神話なら読んだ」 「彼の綴った物語の中に『ネクロノミコン』と呼ばれる書物がある」 「知っている」 「それはラブクラフトが作り出した空想上の書物さ。どんな巨大な図書館にも置いていない」 「……大英図書館にもな」 「その通り。彼は世間に想像上の本が現実に存在すると思わせることに成功した数少ない者のひとりなのさ。彼の素晴らしさはそれだけじゃない。『アーカム』に向かおうとする者だって現れた。存在しない本や町を求めてだ。彼が綴る物語により、たくさんのモノが現実味を帯びた。そう、まるで――」 「――都市伝説のように、か」 「さて、ここまで言えばぼくの目的もわかってきただろう? 『学校町』はどこにある? 千葉県? 埼玉県? それとも東京? もっと言おう。学校町は通称にしか過ぎない。いつから、誰が呼び始めたのかもわからない。じゃあ、この町の本当の名前は? 今、僕らが立っているこの場所の正確な住所は?」 今この場に存在するが世界中のどこにも存在しない町――学校町。 だからこそ錨野は括弧をつけたのか。敬意の証に。 「『学校町』は存在しない町だ。だが、ぼく達がいるこの場所は『学校町』に間違いがない」 「だからお前達は『学校町』を〈ゲーム王国〉に書き換えるのか」 「違うね」 静かに首を振る錨野。 己の高揚を隠さず。だが、強く。 「現存しない国を現存させる。存在しないものが存在した時、世界はどうなるのかが知りたい。それだけだ」 「ラブクラフトはシェアワールドという形を取ることにより己の創作物を都市伝説に近づけた。お前のしていることは――」 「――ラブクラフトの一歩先だ」 無から有を生み出す奇跡は都市伝説で行える。 それとは限りなく似ているが限りなく異なる奇跡は可能なのか。 ラブクラフトの一歩先と錨野は口にした。 彼の眼には学校町がどのように見えているのか。 「そのためにはね、江良井くん。きみはぼくの敵じゃなければダメなんだ。ぼくにとっての『学校町』はきみなんだよ。遅いと笑われてしまうかもしれないが、ようやく覚悟ができた」 正面から江良井の目を見据え、 「ぼくはきみの敵だ」 ――敵となる宣言。 対して、江良井の答えはひどくシンプルなものであった。 「そうか」 この瞬間、錨野は江良井の敵となり、江良井は錨野を敵と認めた。 老若男女区別なく、一切の容赦なく。 総ての敵を殺害する男――江良井卓が錨野蝶助を敵と看做した。 そして、物語は動き出す。 ◆ □ ◆ □ ◆ 「なあ。あんた、〈ゲーム王国〉の人間だろ?」 至村賢が声をかけられたのは陽が落ちるか落ちないかというくらいの夕方。 彼らの仲間が死に、ひとりで火葬を終えたリーダーの下へと向かう最中のことであった。 「〈組織〉所属の契約者って言えば用件はわかるな?」 やや恰幅の良い男――年齢は三十代であろうか――は口元にどこか野卑な笑みを浮かべて至村の前方に立っている。 「……用件はわかった」 「そりゃ良かった。場所はここでいいな?」 「かまわない」 「そう固くなるなよ。俺は金堂摩沙彦。能力は――自分で判断してくれ。〈ゲーム王国〉さんよ」 黒の手袋をはめる金堂。 その指先からは白い筋のようなものが見える。 「……〈ゲーム王国〉じゃない、俺は至村賢ってんだよ」 「ちなみにあんたの能力は?」 「企業秘密だ」 前方の金堂へと同じくらいの警戒心を後方にも向ける。 金堂の武器はほぼ間違いなく手袋に装備された斬鋼線だろう。となると警戒すべき都市伝説は『首なしライダー』か『ピアスの穴から出る白い糸』だ。 どちらかが囮で油断したところをもうひとつの本命での攻撃に繋がるはずだ。 微かに聞こえてくるバイクの駆動音は味方か、都市伝説か。 「俺はお前さんだけを倒せばいいのか?」 「あんたらの敵は沢山いるが、あんたの敵は俺ひとりだ。――俺の能力、見当はついたようだが甘く見てるとあっさり死ぬぜ」 「そいつは怖いな」 ゆっくりゆっくりとふたりの距離が縮まる。 金堂の射程距離がどれだけのものなのか、至村の射程距離がどれだけのものなのか、どちらも間合を計りつつ近づく。 至村の間合まであと一歩のところで金堂が動いた。 「いくぜ、至村賢!」 「来い、金ど――え、あ……」 「一丁あがり」 血も噴かず傷もつかずその場に崩れ落ちたのは至村であった。 見るまでもなく、その顔は死の色に染まっている。 あっけなく決着はついたのだ。 「ご苦労様でした」 「これで契約破棄っと」 「契約を続けなくていいのですか?」 「使いどころのない都市伝説だって説明したのはあんただぜ? こうして結果が出ただけ良しとしてもらいたいな」 「まあいいでしょう。十分とは言えませんが『志村けん死亡説』のデータが取れたのは僥倖でした」 どこからともなく現れた黒服から渡された契約書にサインし、彼が元々契約していた都市伝説との再契約を済ませる。 このためだけに本来契約していた都市伝説との契約を破棄し、『志村けん死亡説』と契約していたと知れば至村は何を思うだろうか。 〈ゲーム王国〉と戦闘後、〈組織〉がしたことは戦闘時にいた〈ゲーム王国〉の面子の徹底的な調査と監視であった。 電話の盗聴は元より、彼らが使用した通信の徹底的な監視。 彼らの能力全てを知ることは出来なかったが、彼らのメンバーは調べ終えた。 メンバーは全部で六人。うち、江良井が殺した新居を除くと五人。 その上で立てられた作戦――〈ゲーム王国〉メンバーの殺害。 金堂摩沙彦を受け持つ黒服、A-№107に割り当てられたのは至村賢の殺害であった。 A-№107が入手できたのは顔写真と名前、身長、体重――表層的な情報のみであり、何と契約しているのかは全く不明。 そこで利用したのが使いどころのない都市伝説『志村けん死亡説』である。 都市伝説の中で使い道のないものは多々存在するが、『死亡説』もそのひとつ。何しろ、使うにあたって相手が同姓同名でなければ意味がない。 だから己の担当する嘱託契約者、金堂に契約させて拡大解釈により同音異語でも発動可能にした。元から契約している都市伝説を契約破棄させたのは多重契約で金堂が飲まれるのを危惧したためだ。 「俺の仕事は終わりだな?」 「今回の報酬です」 「はいどうも。それじゃ、また何かあったら呼んでくれ」 「どちらへ?」 「風呂だよ風呂、泡風呂」 「そうですか」 「人ひとり殺した金が泡風呂一回分ってのは悲しいなあ。今度からもうちょっとイロつけてくれよ」 「考えておきましょう」 立ち去った金堂を見送ることもせず、横たわる至村の遺体を少し調べたA-№107もまた現れた時と同じように姿を消した。 ただ遺された至村を見つけたのは他の誰でもない江良井であった。 一般人がするのと同じように至村に近づき声をかける。 とはいえ、至村の顔色を見て事切れていると判断できたのは、数多くの敵を屠ってきたからであり、葬儀屋として数多くの遺体を見てきたからである。 このまま放置するか否か――この町では人死は珍しくない。 ただの殺人であれば警察の管轄だが、少しでも都市伝説が絡んでいれば事情は変わる。 江良井は至村の死因が何に拠るものか見当がつかないでいた。 「人、殺し……?」 その迷いがあったから――少年と『人面犬』に出遭った。 続 前ページ次ページ連載 - 葬儀屋と地獄の帝王
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1240.html
合わせ鏡のアクマ 38 都市伝説4コマ風劇場 宴への招待 妹ちゃんの場合 「ふみゅう・・・そうですかぁ美味しいですか・・・・・・うふふ」 「えへへ・・・兄さんもっと撫でて・・・んむぅ?・・・」 「あ・・・・・・――ッ!?」ガバッ 「ま、将門貴様ァアアアアアアアアア!!」 精神年齢は圧倒的に妹の方が上なのに、甘えたがりなんですよね・・・ とりあえず兄と共に行くんでしょうね、料理持って。 妹「まぁ一応持っていきますよ、他の方がたくさん食べるかもしれませんから・・・」 * 主要三人 主人公「は?童貞かどうかって・・・・・・まぁ童貞なんだけどな」 姫さん「彼氏いない暦=年齢ですがなにか?」 妹ちゃん「兄さんといる方が楽しいので、異性との経験はあまり・・・」 『怪奇同盟』s 相対性理論「言わせたいのか?言わせたいのかゴハァ!?」 死の行軍「うるせぇんだよモヤシ!・・・あ?テメェ死にたいのか?」 ダルマ(契)「経験ぐらいあるわ、彼女もね」 ダルマ(都)「・・・・・・」コクコク 方位磁針「既婚者なのだが・・・」 けつばん「年齢的に僕はないはず・・・本当の作者に聞かないとはっきり分かんないけどね」 サンチアゴ「んー・・・今のところないです」 タイマー「そんな余裕なかったしな」 東の墓守「あるぞ・・・あの頃は若かったな・・・・・・」 南の墓守「先生は学生時代に経験があるそうです。私はもちろんありません」 盟主「覚えてません・・・たぶん、あると思いますが」 * <町内の復旧について> 南の墓守「三日目の朝には元通りですよ、家具から冷蔵庫の食べかけの料理まで」 東の墓守「元通りにする、という風に話を設定したから 後は組織に住人の記憶をいじってもらえば完璧だ」 南の墓守「先生の能力は本当にすごいんですよ!使ってると死にますけど」 東の墓守「条件さえ守れば万能なんだ。条件はかなり厳しいが」 * 都市伝説4コマ風劇場 宴への招待 主人公××の場合 「うわぁ!生首だ!!・・・って夢か」 「あれ、ザクロどしたの?」 「アクマ・・・け、契約者様が起きないのです!!」 『はぁ、兄さんがいくら揺すっても起きないと』 「そうなんだよ!まさかあの生首がなにか・・・」 『いえ、ただの深寝ですね』 「脈拍すごく遅いけど!?」 『よくあることです』 主人公の体質、疲労が溜まると夢も見ないほど深く眠ります。 この間、なにをやってもまず起きません。でも3時間くらいで普通の眠りに戻ります。 普通の人と違うのは、たとえ足の関節極められようと首を絞められようと起きないところ。(妹実践済み) * 都市伝説4コマ風劇場 宴への招待 姫さんの場合 「生首覚悟ォオオオオ!!・・・お?」 「なんだ夢かぁ・・・むぅ、リベンジのチャンスだったのに」※違う生首です 「ん、待って?宴ということは人が集まる・・・それもわんさか・・・・・・」 「強者の予感ッ!!」キュピーン どうも生首にとり憑かれた事件から、自分を強くすることに意識を向けた姫さん。 元々のう運動能力や体術・技術のスペックが高かったからか、 今では不良100人に負けることがないくらいの肉体的強さを持っています。 しかし精神面では?彼女もそこは理解して、これからも向き合っていくことでしょう。 というわけで、宴の騒ぎに乗じて姫さんは誰かにケンカ吹っかける可能性アリ。 * (わが町のハンバーグより) 都市伝説4コマ風劇場 「戻してこい。落とし主が困っているはずだ」 「でもふきっさらしの外に、放っておけないでしょう!?」 「・・・アクマー、なにがあったの?」 「あ、姫さんこんにちは」 「山で二宮金治郎像を拾ってきたんだって」 「・・・早く帰らせてあげればいいのに」 金さんは妹ちゃんが発見して預かってしまっていたようです。 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3057.html
ビルの屋上に立ち、街を見下ろし 彼女は、口元に笑みを浮かべて両手を広げた まるで、タクトを手にした指揮者のように 「さぁさ、始めましょうか…」 さぁ、見ているがいい、H-No.360 我々の邪魔をした報いを受けるがいい 学園祭の準備で、どうしても帰りが遅くなってしまう やや早足で帰路についていた佳奈美 …しかし 目の前に現れたそれに、思わず足を止める 「え…な、何?」 それは、蛇 巨大な、蛇に見えた どれくらい巨大か? ……大口を開ければ、佳奈美などあっさり丸呑みにできそうなくらいの、大きさだ そして、蛇の種類に詳しい者が見たならば…その蛇が、恐ろしい毒を持っている種類の蛇である事が、わかっただろう 蛇は、その巨大な口を開き その口から覗く鋭い牙が、佳奈美に襲い掛かり………----- くんっ、と 佳奈美の体が、後方に引っ張られる その結果、蛇の牙は佳奈美の体に届かず …代わりに 蛇の、体に…黒い細い何かが、無数に絡み付いて 次の瞬間、蛇の巨体はバラバラに引き裂かれた 「ぁ……」 「佳奈美、無事かっ!?」 「ひ、宏也さん…」 佳奈美を救ったのは、黒服H-No.360…広瀬 宏也 佳奈美の体を片腕で抱きしめながら、宏也は自分がバラバラにした蛇の残骸を睨み付けた …復活してくる様子は、ない (…巨大化した生物…しかも、この蛇、確か…) …宏也自身は、直接見たのは今回が初めてだが だが……辰也から、話を聞いたことがある 確か、この都市伝説を使うのは…… …囲まれたか ヘンリエッタは、小さく舌打ちした まぁ、この程度、自分の相手になどならないが 「じゃが、数が多いのは面倒じゃのぅ…一般人が、通りかかるとも限らん」 自分を囲む、人間大の大きさの蛇の群れ その全てが、毒蛇だ だが、こんな巨大な毒蛇など、通常存在しているはずがない …都市伝説の、力 「……H-No.2か。何を考えておるか、動き出したか…」 ゆっくりと、蛇達はヘンリエッタを追い詰めるように、包囲網を縮めてくる ………ニヤリ ヘンリエッタは、その形の良い可愛らしい唇を、笑みの形に歪めた 「…じゃが……どちらにせよ、甘く見られたものよ。たとえこの時間帯とは言え、妾をこの程度で殺せるとでも?」 ざわり 殺意をまとう、ヘンリエッタ その気配に、蛇達は…まるで、自分達に睨まれた蛙のように、震え上がった 走る 走り続ける 逃げる 逃げ続ける 自分を追うそれから、春風 愛華は逃げ続けていた 巨大な、蛇 恐らくは、都市伝説の影響を受けている、それ 直接的な戦闘能力の低い自分では、それをどうにかすることができない こちらが先に気付いてさえいれば、歌い始めてしまえばいいだけだが……相手が先にこちらに気付き、襲い掛かってきたならば、歌っている暇などない 歌えなければ、彼女の都市伝説は発動できない だから、ただ逃げていた 自分を担当している黒服に連絡しようにも、相手はその隙さえ与えてはくれないのだ 彼女はただ、逃げることしかできない 「-----っ、あ……!」 …しかし とうとう、脚に限界が来た 足がもつれて、転びそうになる 一瞬、脚が止まり その隙を逃さぬように、蛇が彼女に飛び掛る 直撃は、避けた しかし、その牙は、愛華の肌をかすって 「……………ぇ」 その、瞬間 全身の力が、抜けた 思考が、薄まっていく 掠った傷口から、毒が入り込んだのだと、どこか他人事のように、理解して 薄れゆく意識の中、愛華が最後に見たものは 今度こそ愛華を飲み込もうと、蛇が大口を開けて迫ってきている姿だった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4345.html
ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗 04 毎度の事ながら、奴らが現れるのは突然だ。 例えば、部屋から出ようとドアを開いた瞬間に、何となく目線を向けた場所に、路の角を曲がった先に。 或いは、朝早くに起こされて眠気眼で大きな欠伸をした後に目を開けた次の瞬間。 奴ら『黒服』は、まるで人の意識の狭間から湧き出るかのように突然目の前に現れる。 漆黒のダークスーツに、漆黒のサングラス、ぴくりとも動かない口元は感情が欠落しているようで、冷たく虚ろな印象を他人に与えている。 いつものように現れたいつもの格好をした『黒服』、しかし俺はそこに少しの違和感を感じた。 「おはようございます、今日はお早いお目覚めですね、貴方はいつも休日は昼頃まで寝ていると我々は認識していましたが」 いつもの『黒服』と同じような無感情な話し方、しかし違う 今まで俺の前に現れていたやつと比べ明らかに声が高い、そして。 「お前、もしかして背が縮んだ?」 今までの『黒服』は俺より頭一つ分大きかったのだが、此奴は若干、俺よりも背が低い。 「人間は基本的に背が伸びる事はあっても、そうそう縮むことは無いと思いますが…」 「お前、人間じゃないじゃん、都市伝説じゃん」 「『もと』人間の、『半』都市伝説です」 「あんま変わらないだろ……、しかし、だとすると今までの奴とは別人か? 前の奴はどうした」 「ええ、その事で今日は寄らせていただいたのです、実は前担当の者が現在療養中でして、貴方の担当が私に移り変わったのでその報告を、と」 「療養中……?」 何か嫌な予感がする。 「はい、昨夜、謎の都市伝説が突如現れ、我々『組織』に宣戦布告をし、襲いかかってきたのです、その強さは凄まじく、一撃で我々『黒服』を消滅させ、手に持った刀の一振りで山すら粉砕させてしまいました」 「…………」 「どうやら、新種の伝説のようで未だ正体は不明ですが、妙な仮面に派手なマフラー、近未来的なデザインのスーツを着用していた事から、特撮やアニメ、ゲームの類から派生した者だと我々は考えています」 嫌な予感的中、そして『組織』の推測、的外れすぎワロタ どう考えても特撮でもアニメでもゲームでもなく、俺と糞餓鬼とロリ婆の共同黒歴史ノートから発生した、中二病設定の太郎さんです、本当にありがとうございました。 前ページ次ページ連載 - ギザ十と幽霊少女とご先祖様と組織の狗